奈良県の相続税申告状況について(令和4年、令和5年分)
奈良県の相続税申告状況について
こんにちは。今回は公表されている「相続税の申告事績(令和4年分・令和5年分)」をもとに、奈良県内における相続税の申告状況を見ていきたいと思います。
相続税というと“富裕層だけの話”と捉えられがちですが、基礎控除の引き下げ(2015年施行)などの影響で、以前よりも身近な税金になってきています。
どのように推移しているか、ポイントを整理してみましょう。
1. 被相続人数(死亡者数)は微減
- 令和4年分:17,166人 → 令和5年分:16,972人(98.9%)
奈良県内の死亡者数は微減しています。全国的には高齢化に伴い死亡者数は増加する傾向がありますが、都道府県単位では年度ごとに多少の増減があるようです。
2. 相続税の申告書を提出した被相続人数は増加
- 令和4年分:1,775人 → 令和5年分:1,863人(105.0%)
相続税の申告対象となった被相続人数は増加しています。基礎控除引き下げ後、課税ラインにかかる人が少しずつ増えている現状がうかがえます。
3. 課税割合も上昇傾向
- 課税割合(=相続税申告書を提出した被相続人数 ÷ 被相続人数):令和4年分 10.3% → 令和5年分 11.0%
「一握りの人だけが対象」というイメージが強い相続税ですが、この課税割合がじわじわと上昇しているのは注目ポイントです。
4. 相続税の納税義務がある相続人の数は微減
- 令和4年分:3,827人 → 令和5年分:3,809人(99.5%)
納税義務の発生した相続人はやや減少しています。被相続人数が減ったことなど、年度ごとの事情によって左右されると考えられます。
5. 課税価格も税額も増加
- 課税価格合計:令和4年分 2,178億円 → 令和5年分 2,308億円(106.0%)
- 税額合計:令和4年分 245億円 → 令和5年分 277億円(113.1%)
令和5年分では課税価格が約6%増加しており、それに伴い納める税額も約13%増えています。
6. 一人あたりの課税価格・税額もやや増加
- 被相続人1人あたりの課税価格
(課税価格合計 ÷ 申告に係る被相続人数)
令和4年分 12,270万円 → 令和5年分 12,390万円(約101.0%) - 被相続人1人あたりの税額
(税額合計 ÷ 申告に係る被相続人数)
令和4年分 1,378万円 → 令和5年分 1,489万円(108.0%)大きくはないものの、平均的には少しずつ上昇しています。申告対象者が増えただけでなく、一人ひとりの負担感もじわりと増していることがうかがえます。
相続税の今後の動向と備え
今回のデータからは、
- 相続税の申告対象者(被相続人数に占める割合)が微増している
- 課税価格が増え、納める税額の合計も増加している
- 一人あたりの税負担も少しずつ上昇している
といった点が読み取れます。基礎控除の引き下げや資産評価の変動など、複合的な要因によって「思っていたより相続税がかかる」というケースが増えている印象です。
相続税対策のポイントとしては、
- 早めの相談:税理士・弁護士・司法書士などの専門家に、生前のうちから相談しておく
- 不動産評価や分割方法の検討:不動産をどのように活用・分割するかで課税額は大きく変わる
- 生前贈与・遺言書の準備:贈与税や遺言書の有無によって相続税を左右する要素が多い
特に、誰がどの財産を相続するかのシミュレーションは重要です。遺言書があるかどうかで、相続人間のトラブル防止だけでなく、税額にも大きく影響が出ます。
まとめ
奈良県の令和5年分相続税申告状況を見てみると、課税価格が2,178億円から2,308億円に増加し、さらに被相続人1人あたりの課税価格も12,270万円から12,390万円へと上昇しています。これらのデータは、従来に比べて相続税がより多くの方に関係する税金になりつつあることを示唆しています。