令和6事務年度「所得税の調査等の状況」を奈良の税理士が読んでみて思うこと

国税庁から令和7年12月に公表された「令和6事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」に目を通しました。

 

奈良で税理士事務所を営む私の現場感覚と重ね合わせると、数字が伝えるメッセージは想像以上にリアルでした。今回はその内容を整理しつつ、実務家としての所見を書き残しておきます。

 

件数も追徴税額も増加 ― 過去最高を更新

まず全体感です。国税庁の公表資料(PDF)によれば、令和6事務年度の所得税の調査等の合計件数は約73万6千件で、前年度の約60万5千件から約21.7%の増加となっています。実地調査件数は約4万7千件とほぼ横ばいですが、書面・電話・来署依頼による「簡易な接触」が約68万9千件まで膨らみ、前年度比で23.7%増。件数そのものが大きく増えているということです。

 

そして、追徴税額の総額は1,431億円で過去最高を更新しました。前年度の1,398億円からさらに上積みされた格好で、実地調査1件当たりの追徴税額も224万円から241万円に増えています。「件数も件数1件当たりの金額も上がっている」というのは、調査側の本気度を示す数字だと感じます。

 

そしてこの資料の冒頭にははっきりと、「選定にAIを活用するなど、効率的かつ的確に調査等を行った結果」と書かれています。AIで申告書を分析して、申告漏れの可能性が高い納税者を絞り込む仕組みが、もう実務段階に入っているということです。

 

奈良の現場でも問い合わせは確実に増えている

当事務所での実感とも、この資料の数字はピタリと一致しています。

ここ1〜2年で、税務調査に関する問い合わせの電話やご依頼が明らかに増えました。無申告者からのご相談も増えましたし、これまでは「この時期は調査の話は少ないな」と感じていた閑散期にも、調査の事前通知や着手のご相談が入ってくるようになりました。年間を通じて平準化して件数が増えている印象です。

 

これを執筆している2026年5月ではありますが、前月4月には特に無申告者からの問い合わせも多かったなという印象があります。

「件数事態が増えている」という資料の数字と、現場の体感がここまで揃うのは珍しいことだと思います。

 

アフィリエイト・YouTuber・インスタグラマー・ネット通販・ネットオークションへの調査が活発化

今回の資料を読んでいて、奈良で個人のお客様と接する立場として特に注目したいのが、新たな経済活動に対する調査です。

国税庁は、シェアリングビジネス・サービス、ネット広告(アフィリエイト等)、デジタルコンテンツ、ネット通販、ネットオークションその他新たな経済活動を「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引」と総称し、令和6事務年度に1,155件の実地調査を実施。1件当たりの申告漏れ所得金額は1,595万円、追徴税額は1件当たり305万円となっています(国税庁公表資料)。

身近な仕事に置き換えると、

  • アフィリエイター(ブログ・SNSでの広告収入)

  • YouTuber(広告収入、企業案件、スーパーチャット)

  • インスタグラマー・TikToker(PR案件、企業タイアップ、ライブ配信のギフト収入)

  • ネット通販(自社EC、Amazon、楽天、BASE、STORES など)

  • ネットオークション・フリマ(ヤフオク、メルカリ、ラクマ など)

  • デジタルコンテンツ販売(電子書籍、写真・イラスト・音源・動画素材、note の有料記事、オンラインサロンなど)

  • シェアリングサービス(民泊、カーシェア、スキルシェア、Uber Eats などの配達など)

これらは、いずれもプラットフォーム側から国税当局へ取引情報が渡りやすい業種です。インターネット上の取引はログとして残るため、AIによる分析との相性も極めて良い。「申告していなくても誰にも分からないだろう」という発想は、もはや通用しない時代に入っています。

当事務所でも、ここ最近はこうした業種の方からの税務調査のご相談が増えています。「副業のつもりで始めたら金額が大きくなってしまい、申告していなかった」「会社に副業がバレないようにしていたら税務署から連絡が来た」といったケースです。共通しているのは、皆さん最初は「まさか自分のところに来るとは思わなかった」とおっしゃることです。

 

過去12年で顧問先の税務調査は1件、追徴税額ゼロ

ここで自事務所の話を少しだけさせてください。

私が奈良で税理士事務所を開いてからの過去12年間で、顧問先に対して入った税務調査は実質1件のみです。しかも、追徴税額は発生しておりません

これだけ件数が増え、AIによる選定が進み、追徴税額が過去最高を更新している局面でも、この水準を維持できているのは、

  • 申告前段階での資料収集と論点整理

  • 売上計上時期、外注費、交際費、棚卸など、調査で論点になりやすい科目の根拠書類の整備

  • グレーゾーンが生じた場合の事前検討

といった、地味でも確実な積み重ねの結果だと考えています。

 

まとめ ― 専門家に依頼して予期せぬ財産損失を避ける

これだけ調査件数が増え、追徴税額も過去最高を更新し、AIによる対象者選定が進んでいる現状では、やはりきちんと申告していただくことが何より大切です。追徴税額に加えて、無申告加算税・過少申告加算税・重加算税・延滞税まで重なれば、後から払うコストは決して小さくありません。

特に、アフィリエイト・YouTube・インスタグラム・ネット通販・ネットオークションといった新しい働き方・収入源をお持ちの方は、「自分は規模が小さいから大丈夫」と思わず、早めに専門家にご相談いただくことを強くお勧めします。専門家に依頼して予期せぬ財産損失を避ける、これが今のAI時代の税務調査に対する最も合理的な備えだと考えています。

 

奈良県内で、確定申告・法人申告のご相談お気軽に当事務所までお問い合わせください。